【脳科学で解説】リスニングが上達しない決定的な理由【カギは音声知覚】

シャドーイングの効果
  • 毎日リスニングしてるのに、英語が聞き取れるようにならない
  • コツコツ単語を暗記してるけど、リスニングに役立ってる気がしない
  • 頑張ってるのに、なんでリスニングが上達しないの!?

こんな悩みはありませんか?

実は、聞き流し英語や単語の暗記で鍛えられるリスニング力には限界があります。中級から上級を目指すには「音を正確に聞き取る能力」が必要になってきます。

音を正確に聞き取る能力がないと脳に大きな負担がかかり、スムーズにリスニングできないことが脳科学の研究で明らかになっています。

私はTOEIC600点から伸び悩んでいましたが、「音を正確に聞き取る能力」を意識して鍛えたことでリスニング力が一気に向上し、TOEIC900点、英検1級を取得。30代後半で公務員から英語関係の仕事に転職することができました。

この記事では、頑張ってもリスニングが上達しない決定的な理由を脳科学の観点から解説します。

これを読めば、時間と労力を無駄にせず、本当に効果がある勉強を始めることができます。

頑張ってもリスニングが上達しない決定的な理由

聞き流し英語や単語の暗記を頑張ってもリスニングが上達しない理由は、リスニングに必要な能力を鍛えられていないからです。

リスニングには、「音声知覚」と「意味理解」という2つの能力が必要です。

多くの人は「意味理解」を重視した勉強をしていますが、リスニングには「音声知覚」の方がより重要になります。

リスニングに必要な能力:「音声知覚」と「意味理解」

リスニングには「音を正確に聞き取る能力」と「聞き取った音の意味を理解する能力」の2つが必要です。それぞれ「音声知覚」と「意味理解」といいます。

「Apple」と聞こえた時、発音を「アポー」と正確に聞き取れる能力が音声知覚、「アポー」の意味が「りんご」と分かる能力が意味理解です。

音声知覚と意味理解がスムーズにできるようになると、リスニング力も上がります。

「音声知覚」・「意味理解」の鍛え方

音声知覚を鍛えるためには、音を正確に発音する練習、意味理解を鍛えるには、単語や文法の勉強が必要になります。

 必要な能力 意味鍛える方法
音声知覚音を正確に聞き取る能力音を正確に発音する練習
(シャドーイング)
意味理解聞き取った音の意味を理解する能力単語や文法の勉強
聞き流し英語

音声知覚を鍛える一番の方法はシャドーイングです。シャドーイングとは、英語の音声を聞き少し遅れて復唱する勉強法で、音を正確に発音する力が身につきます。

一方、多くの人が実践している聞き流し英語や単語の暗記は、基本的に意味理解を鍛える方法です。英語を聞き、覚えた単語の意味が分かるかを確認する練習になります。

頑張ってるのにリスニングができない決定的な理由は、音声知覚を意識的に鍛えていないことです。単語の意味がわかっても、その前に音が正確に聞き取れないとリスニングはできません。

「音声知覚」できないとリスニングができない

音声知覚ができないと、脳への負担がとても大きくなることが研究で明らかになっています。

英語を聞き取る時、脳のワーキングメモリという部位を使います。PCメモリと同じで、使えば使うほどメモリが減り、負担をかけすぎると処理が遅くなります。

音声知覚と意味理解では、意味理解の方が処理が複雑で、ワーキングメモリを多く消費します。音声知覚が上手くできず、音の聞き取りにワーキングメモリを多く消費してしまうと、意味理解に必要なワーキングメモリ足りず、意味を理解できません。

音声知覚が上手くできる人は、使えるワーキングメモリが十分残っているため、単語や文法の知識を活用してスムーズに意味理解できます。

音声知覚できない人                 音声知覚できる人

リスニングで「音声知覚」が重要な理由

音声知覚でワーキングメモリを消費せず、意味理解に多く残しておくことがリスニングのカギです。

リスニング時の脳内プロセスを理解すると、音声知覚をスムーズに行うことがいかに重要かが分かります。

ここからは、リスニング時の音声知覚・意味理解のプロセスを具体的に解説します。

リスニング時の脳内プロセス

脳は「音声知覚」→「意味理解」の順で処理します。意味理解は、具体的に5つのプロセスに分かれます。

意味理解5つのプロセス

(1)語彙処理:聞こえてきた単語の意味を把握
(2)文法処理:正しい文法構造を検討
(3)意味処理:文法が正しくても意味が通じるか検討
(4)文脈処理:前後の文脈から意味を推測
(5)スキーマ処理:一般常識等を加味して意味を推測

このように、意味理解は音声知覚に比べ処理が多く、ワーキングメモリを多く使用します。

音声知覚できる人の脳内プロセス

Time flies like an arrow.(光陰矢のごとし)

という英文をリスニングする時の脳内プロセスを解説していきます。

音声知覚

Time flies like an arrow. は、正しく音声知覚できると、

「タイム」「フライズ」「ライカン」「アロー」と聞き取れます。

意味理解(1)語彙処理

「タイム」「フライズ」「ライカン」「アロー」を音声知覚した後、脳内では以下の単語が候補として引き出されます。

  音   候補①候補②候補③
タイムTime(時間)
フライズflies(fly(飛ぶ)の3人称単数)  flies(fly(ハエ)の複数形)   fries(fry(揚げる)の3人称単数)
ライカンlile an(〜のような)RAIKAN(固有名詞?)
アローarrow(矢)allow(許す)

語彙力があるほど多くの候補を引き出せるので、意味理解がしやすくなります。

意味理解(2)文法処理

単語の候補を組み合わせて、文法的に正しいパターンを考えます。

文法パターンA【名詞動詞前置詞目的語
 候補① Time flies like an arrow.
 候補② Time fries like an arrow.

文法パターンB【名詞動詞目的語※「RAIKAN arrow」が目的語
 候補③ Time flies RAIKAN arrow.
 候補④ Time fries RAIKAN arrow.

文法パターンC【名詞動詞目的語※「Time flies」が名詞
 候補⑤ Time flies like an arrow.

この時点で、「アロー」=「allow」は文法的に成立しないため、候補から外れます。

文法知識があると、この処理がスムーズにできます。

意味理解(3)意味処理

文法処理した文章の意味が、日本語として通じるか検討します。

  • 候補①:時間は矢のように飛ぶ → ◯
  • 候補②:時間は矢のように揚げる → ✕
  • 候補③:時間はライカンの矢を飛ばす → ◯
  • 候補④:時間はライカンの矢を揚げる → ✕
  • 候補⑤:時間のハエは矢が好き → ◯

※候補③、⑤は、「ライカンの矢」「時間のハエ」というワードが存在するなら意味として通じます。

意味理解(4)文脈処理

前後の文脈から文の意味を推測します。

ここで、前後の文脈に「ライカンの矢」「時間のハエ」というワードがなければ、③、⑤は候補から外れます。

意味理解(5)スキーマ処理

一般常識を加味して意味を推測します。

候補①「時間は矢のように飛ぶ」は、ことわざの知識があれば、「光陰矢のごとし」と判断できます。

これで、Time flies like an arrow. のリスニングは完了です。

実際は、意味理解(1)〜(5)は同時並行的に一瞬で行われますが、音声知覚できると意味理解がスムーズにできます。

音声知覚できない人の脳内プロセス

では、音声知覚が上手くできず、「ライカン」の音を聞き取れなかった場合、意味理解はどうなるでしょうか?

「タイム」「フライズ」「???」「アロー」と聞き取った状態で意味理解を行います。

(1)語彙処理、(2)文法処理、(3)意味処理の段階で候補を絞るのは難しくなります。「???」に入る単語によって、候補が無限に考えられるからです。よって、(4)文脈処理、(5)スキーマ処理において、前後の文脈や一般常識から意味を推測するしかありません。

音声知覚できた場合に比べて判断材料が少なく、正しい意味を理解するのが困難です。脳への負担も大きくなります。

ここで重要なのは、音声知覚ができないと単語や文法の知識がほとんど役に立たないことです。

単語や文法の知識が重要になるのは(1)語彙処理、(2)文法処理の段階です。音声知覚ができないとこのプロセスがほぼ機能しないので、覚えた知識を活かすことができません。

音声知覚を鍛えるにはシャドーイング

リスニングで正しく意味を理解するには、音声知覚が重要になります。音声知覚を鍛える一番の方法は、シャドーイングです。

シャドーイングとは、英語の音声を聞き少し遅れて復唱する勉強法で、音を正確に発音する力が身につきます。

シャドーイングが音声知覚に効果がある理由

音声知覚を鍛えるには、音を正確に発音する練習が必要です。

脳は、聞こえてきた音声のうち、自分で発音できる音しか認識しない性質があります。脳は日々たくさんの音を処理しますが、本当に重要な音だけ認識できるよう、自分で発音できない音は雑音として無視してしまうのです。

例えば、「Apple」と聞こえた時、自分で「アポー」と正しく発音できる人は、脳が音を認識し、「Apple」=「アポー」=「りんご」とスムーズに理解できます。「アップル」と発音している人は、脳が「Apple」=「アップル」とは認識できず、雑音として無視してしまいます。

正しい発音を知らないまま漠然と英語を聞くのは、雑音を聞くのと同じです。効果がありません。

シャドーイングは正しい発音で復唱する練習なので、音声知覚を鍛えるのに効果があります

シャドーイングのやり方

シャドーイングは、30秒〜1分くらいの英語教材を使い、以下のやり方で行います。

①英文を見ずに、音声を聞く【3回】
②英文を読んで、意味を理解する(分からない単語は調べる)
③英文を見ながら、音声にピッタリ合わせて英文を読む【10回】
④英文を見ずに音声を聞き、少し遅れて復唱する【20回】
⑤最後に音声を録音し、自分の発音を確認する

一つの音声を1日30分、3〜4日繰り返して練習してください。3ヶ月続けると効果を実感できます。

毎日集中して英語を聞き、声に出して発音する練習を繰り返すことで、正しい発音が身につきます。

※詳しくはこちら→【詳細解説】シャドーイング基本のやり方【継続のコツは?】

リスニング上達だけじゃない、シャドーイングのメリット

シャドーイングのメリットは、リスニングの上達だけではありません。

  • 正しく発音する力が鍛えられる(リスニング力向上)
  • 英語のフレーズが自然に身に付く(スピーキング力向上)
  • リーディング・ライティング力も一緒に向上する
  • 短期間で効果を実感できる(コスパがいい)

リスニングはもちろん、スピーキング、リーディング、ライティング力を短期間でバランスよく上達させることができる勉強法です。

※詳細はこちら→【初心者向け】シャドーイング4つの効果と基本のやり方を解説【おすすめ教材も紹介】

まとめ:頑張ってリスニング力を上げたいならシャドーイングをやろう!

毎日リスニングしたり、コツコツ単語を暗記してもリスニングが上達しないのは、音声知覚ができないからです。音声知覚ができないと、どんなに単語や文法の知識があっても役に立ちません。

音声知覚を鍛える一番の方法がシャドーイングです

1日30分、3ヶ月続ければ、リスニング力の向上を実感できます。

ただし、シャドーイングは正しいやり方で続けないと、効果がありません。効率よく勉強するため、アプリや発音の添削サービスの利用をおすすめします。

おすすめシャドーイング教材

【シャドテン】
・英語コーチングスクール「プログリット」が提供するシャドーイング添削アプリ
月額21,780円(税込)で、プロ講師から1日1回添削を受けられる
・自分のレベルにあった教材を選んでもらえるので、教材探しの手間が省けて便利

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